映画『キル・ボクスン』冒頭の一騎打ちのロケ地
ここでは、映画『キル・ボクスン』(原題:『길복순』)冒頭の、キル・ボクスン(チョン・ドヨン)とヤクザの織田信一郎(ファン・ジョンミン)が一騎打ちする鉄橋のシーンについて、詳しくまとめています。
設定上の場所:ソウル「동호대교(東湖大橋)」
監督のピョン・ソンヒョンはインタビューで「あそこは동호대교という設定」と明言しています。
동호대교はソウル特別市の漢江に架かる実在の橋で、以下の特徴があります。
- 位置:城東区玉水洞(옥수동)と江南区狎鴎亭洞(압구정동)を結ぶ。
- 構造:中央にソウル地下鉄3号線の鉄道路線(トラス構造の鉄橋部分)が通り、その両側に道路が並ぶ複合橋。全長約1,095m。
- 特徴:3号線の列車が橋の上を走る光景がよく見られ、夜景もきれいなスポットとして知られています。北側の玉水駅がすぐ近くにあります。
映画ではこの橋の上で、深夜に地下鉄が通過する光が「フィルムが回るような」演出として使われています。監督は「派手なアクションよりムードを優先した」と語っており、列車の通過光を意図的に活かした演出です。
동호대교(東湖大橋)のイメージは、「漢江の上を電車で渡る――『キル・ボクスン』冒頭の橋」を参考にしてください。
実際の撮影は「セット」
ただし、実際の동호대교で撮影されたわけではありません。
Netflix公式のメイキング映像や監督・キャストのコメントによると…
- 鉄橋部分はスタジオに組んだセットで撮影されました。
- 照明をコントロールしやすくするため(列車通過の光を再現するため)と、アクションの安全性・撮影のしやすさのためです。
- 撮影当日は氷点下7度の極寒で、地面に水もあった過酷な環境でした。ファン・ジョンミンは下着姿でこの寒さの中撮影しています。
- チョン・ドヨンにとっても本作で最初の本格アクションシーンだったそうです。
つまり「実在の동호대교をモデルにしたセット」で撮られた、というのが正確です。実際の橋や高架道路の上で深夜にアクションを撮るのは安全面・許可面で現実的ではなかったのでしょう。
補足
映画全体では実在の場所が多く使われています(文化駅ソウル284、韓国銀行貨幣博物館、충정로역近くの「철길 떡볶이」、旧강촌역近くの피암터널、富川のアートバンカーB39など)。しかしこの冒頭の鉄橋対決だけは、雰囲気を最優先してセットで作り上げたシーンです。
実在の동호대교を訪れてみると、映画の雰囲気を想像しやすいかもしれません。夜に3号線の列車が走る様子は、映画のあの印象的な光の演出を思い出させます。
『キル・ボクスン』冒頭の鉄橋対決シーンは、実在の동호대교(東湖大橋)をモデルにしたスタジオセットで撮影されています。セットデザインのポイントを整理します。
セットのコンセプト
監督のピョン・ソンヒョンは「派手なアクションよりもムード(雰囲気)を優先した」と繰り返し述べています。
地下鉄3号線が通過する際のライトが、フィルムが回転しているように見える演出を狙いました。
そのため、実際の橋ではなく、照明を完全にコントロールできるセットを組む必要がありました。
セットは「門を開けた状態」で撮影されており、外部からの光を意図的に取り込んでいます。
美術監督は한아름(ハン・アルム)です。前作『キングメーカー』でもピョン監督と組んでおり、本作では「プロダクションデザイナーシステム」として、色調やトーンの設計から深く関わっています。
撮影時の実際の状況
セットは屋内に組まれたものの、撮影環境はかなり過酷でした。
- 気温は氷点下7度。
- 地面に水が張られていた。
- ファン・ジョンミンは下着姿でこの環境に耐えました。
- チョン・ドヨンにとっても本作で最初の本格的なアクションシーンでした。
照明とカメラワーク(撮影監督:チョ・ヒョンレ)がセットデザインと強く連動しており、「現実の橋」ではなく「映画的な鉄橋」として設計されています。
映画全体のセット設計の特徴
この鉄橋シーン以外にも、本作の美術はかなり意図的に設計されています。
- 赤と緑のコントラストが多用されています。緑は母親であるボクスンが娘に対して抱く理想像を象徴する色として使われています。
- レストランでの乱闘シーンでは、美術監督がテーブルの配置を箱でシミュレートし、空間内を移動しながら戦う動線を事前に設計しています。典型的な「広い空間で物を壊しまくるアクション」を避けています。
- 「平行世界のソウル」という世界観のため、実在の場所(文化駅ソウル284、韓国銀行貨幣博物館など)とセットを混ぜて、現実と非現実が混在する雰囲気を作っています。監督は「自分はビジュアリストではない。シナリオを書いた後にハン・アルム美術監督に見せて、そこからビジュアルが始まる」と語っています。つまり、物語のトーンを視覚化するためにセットが機能しているのが特徴です。
より詳しい資料としては、脚本集『길복순』(Plain Archive刊/『길복순 각본집』を読んだメモ)にハン・アルム美術監督のプロダクションデザイン解説とスチールが収録されています。セットの設計意図を知りたい場合はそちらが参考になります。
脚本集『길복순』より
脚本集の第3場は「閉鎖された漢江の橋」で、見出しは室内。列車が窓のフレームになる書き方も、ここで先に指定されています。実在の東湖大橋は設定の名前であり、この頁は屋外ロケの証明ではありません。